各社のテールベルト絵具一覧
各社のテールベルト絵具一覧

テールベルトについて

(緑土)

ルフラン社の改定

この記事を書くことになったきっかけは2018年に行われたルフラン社の改定によるものでした

テールベルトは基本的な顔料であるにもかかわらず、なかなかお奨めできる商品が絞りきれない絵の具といえます
教室では長らくルフラン社のテールベルトを紹介してきましたが、 残念なことに最近の同社ラインナップの改定により大幅に色調が変わってしまいました。

二通りの色調

テールベルトは製造会社の考え方により大きく二通りの色調が見られます
ひとつは「柔らかい自然な緑味の土」でありイエローオーカーなど他の土色系絵の具との混色も大変スムーズです
ただ着色力には期待ができず、緑色として使おうと考えると弱く感じます

もうひとつはビリジャンなどに近い鮮やかな緑味を持ち、透明性の高い色調のものです

今回のルフラン社の改定は

「自然な緑味の土色系の絵の具」 ⇒ 「透明性が高く緑味の強い絵の具」 への変更でした

各社のテールベルトについての簡単なレビュー

各社のテールベルト絵具一覧
各社のテールベルト 商品写真

現時点(2018)でお奨めできそうな市販のテールベルト数点をご紹介します

画像左から順に

  • アンティーク・グリーンアース・フロム・ベローナ
    (マイメリ社/イタリアの大地シリーズ)
  • テールベルト
    (マイメリ社/ピューロシリーズ)
  • テールベルト
    (ルフラン社/~2018 旧色)
  • テールベルト
    (ルフラン社/2018~ 新色)
  • アースグリーン
    (クサカベ社)
各社のテールベルト 色味サンプル
各社テールベルトを厚塗り/薄塗りしたもの

マイメリ社 アンティークグリーンアース・フロム・ベローナ/イタリアの大地シリーズ

色調は文句なく良いです
この、渋くて味わい深い色調には得がたい価値があります
ただ、このイタリアの大地シリーズの注意書きにもあるように、このシリーズの顔料は粒子がかなり大きめでザラザラしています。「お好みで細かくすってお使いください」といったことも書いてあるのですが、やはり商品としてはザックリ作った感は否めません。
価格も安価なため持っていて損のない絵の具だといえます

マイメリ社 テールベルト/ピューロシリーズ

マイメリ社の最高級油彩絵の具ピューロシリーズ
緑味を感じさせるテールベルトですが、自然でやわらかい色調です。粒子も申し分のない状態で他の色との混色も良好。とても使いやすい絵の具に仕上がっています

多少高価ですが、高品質なテールベルトを使いたいという方にはこの絵の具がお奨めです。

ルフラン社 テールベルト/~2018(旧色)

ルフランの変更前のテールベルトです
テールベルトの顔料にイエローオーカーを混ぜて作った絵の具です
オリーブがかった穏やかな緑の色調です
イエローオーカーと合わせたことにより適度な被覆力が生じ使いやすい絵の具に仕上がっています

既に混色してあるという点はマイナスともいえますが、使いやすさという観点からお奨めできる絵の具でした。

※イエローオーカーとの混色はテールベルトを使う際にパレット上で最も頻繁におこわれる混色であり、それほどのマイナスではないと考えます

ルフラン社 テールベルト/2018~(新色)

今回の改定による新色です
(旧)テールベルトからイエローオーカーを外し、代わりにビリジャンの顔料を加えて作られています

けっしてわるい色味ではないと思います
今回の改定では透明感と緑味が前面に出る結果となり、ビリジャンを加えたことにより着色力も増しました
また、この変更のために同社が用いた顔料がフタロシアニンなどではなくビリジャンである点にも好感がもてました

現在店頭に並んでいる 透明性が高く緑味の強いテールベルトの中では良心的で品質の良い絵の具だと思います
ただし、自然でやわらかな色味のテールベルトからは離れてしまいました

クサカベ社 アースグリーン

クサカベが発売している絵の具で中身はテールベルトです。

少しややこしいのですが、 クサカベはこの「アースグリーン」とは別に「テールベルト」という名前の絵の具も発売しています
この絵の具(名前:テールベルト)は一見美しい色調なのですがチューブの中にはテールベルトの顔料は入っていません(3~4種類の絵の具を混ぜ合わせてテールベルトのような色を出している)

話が戻りますがこのアースグリーンはなかなか良い絵の具でした
色調はクロムオキサイドに近い明るく乾いた感じの緑ですが、テールベルトならではの自然な風合いを持ち、着色力も控えめなため混色した際に他の絵の具を喰うこともありません

多少微妙なところもありますがお奨めできる絵の具だと思います

黄土系絵具との混色例

次にイエローオーカー系の絵具と混色した時の色味を見てみます

テールベルトと土色系絵の具との混色テスト
テールベルトと土色系絵の具との混色テスト

クサカベ社のアースグリーンをベースにした混色テスト

上段は天然イエローオーカーとの混色です
多少明るく軽めの色ですが適度な透明感を保ち使いやすい色になりました

下段はローシェンナとの混色です
茶がかった緑色の、天然テールベルトに近い良い風合いの色を作ることができます

マイメリ社のテールベルト/ピューロシリーズをベースにした混色テスト

上段は天然イエローオーカーとの混色です
文句のない美しい色調を得ることができました

下段はローシェンナとの混色です
これも美しく深みのある良い色が得られました

混色テストからの結論

どちらも有用

マイメリのテールベルトの混色は大変に美しく満足のいくものですが、クサカベのアースグリーンもそれにかなり近い色を作ることができました。ただ、やはり元々の顔料の違いからクサカベの方が若干明るめであり、マイメリの方が深み・風合いにおいて優れていると感じました

現時点でのお奨めは

以上の結果から
一般的な使用であればクサカベのアースグリーンを、そしてテールベルトに拘りをもって使っていきたいという方にはマイメリピューロのテールベルトをお奨めしたいと思います